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カリノ界隈

フリーライターカリノのブログです。

おそろしい純不倫漫画「あなたのことはそれほど」がドラマ化

不倫は日常と非日常の間に

こんにちは。フリーライターのカリノです。
ただいま楽しく試行錯誤中につき、キャリアライターの肩書はいったん脇に置いておくことにしました。今日も軽やかに生きています。

さて、今日は不倫について書こうと思います。
というのも、不倫漫画「あなたのことはそれほど」について語りたいからです。 

 

あなたのことはそれほど 1 (Feelコミックス)

あなたのことはそれほど 1 (Feelコミックス)

 

 

不倫。字面も響きも不穏なものを感じる単語ではありますが、こう見えて15年ほど会社員として生活していた私は、不倫にはわりと耐性があります。なんで会社生活が関係あるのかって? だって、日本の不倫の85%は会社で起こっているんですよ。知らないの? 私も知らないけど。あとの残りはPTAと芸能界。これも、まあ、適当ですけど。

とにかく、会社という組織において、不倫というのがそんなに珍しくないというのは事実と言っていいでしょう。私がこれまで所属した会社組織は、全部で6社ですが、そのうちの5社で不倫について見聞きしました。1社は女性しかいない会社だったので、ノーカウントとします。つまりほぼ100%の会社で不倫が存在する、っていうのは言い過ぎ?

これは、私が人事部にいたというのも関係あるかもしれません。人事部には公私さまざまな社員情報が集まってくるし、タレコミみたいなものも時々あります。私自身も、人事うんぬんに関わらず、人畜無害なフリしたゴシップ好きで、道徳観念みたいなものも低いので(人として最低か。)、個人的にそういう情報が集まりやすいのかもしれません。

それで、何が言いたいのかといいますと、不倫ってびっくりするほどめずらしい出来事じゃないよねってことです。「みんなやってるよー!」ってほどではないと思うけど、不倫が特別で、それだけで物語になる時代じゃないし私じゃないよってことが言いたいわけです。

感情移入を拒む登場人物たち

そんなわけで、不倫の話題には否定も応援もせず、全力で面白がるスタンスの私ですが(人として最低か。)、物語としての不倫は別。たとえば「心から愛し合っているのに結ばれない」と悲劇ぶられても、離婚が特別なものじゃない現代、「じゃあ別れればいいでしょ」って白けちゃいますよね。もう不倫には、禁じられた恋愛を演出する機能はないんだと思います。

禁じられた恋愛としての不倫物語が陳腐化された今、どんな物語だったら不倫を物語として成立させることができるんでしょう。たとえば、「国境の南、太陽の西」(村上春樹)や「ふれなばおちん」(小田ゆうあ)など、配偶者への本物の愛情もありながらの婚外恋愛。これもひとつの解答かもしれません。これだったら、恋愛相手への恋情だけでなく、種類のちがう愛情との比較や葛藤や戸惑いといった複雑な感情を楽しむことができます。これまでの私にとっての面白い不倫物語といえば、こうした「恋愛と家族愛」「情熱と情」の対立に、学んだり共感したりできるもの、という認識でした。

けれども、この「あなたのことはそれほど」は、私の不倫物語観をあっさりとくずす物語です。もっと言うなら、不倫ものに限らず物語観そのものをくずされたと言ってもいいかもしれません。

まず私が驚くのが、登場人物への感情移入のできなさ。不倫する側についてもされる側についても、人物描写はとても丁寧です。主人公がどうして不倫をすることになったのか、どう感じてるのか、とても詳しく描かれています。不倫相手についても同じ。どんな人物で、どんな経緯で不倫にいたったのか。それぞれの配偶者についても同様です。なのに、その誰にも、私は感情移入することができないんです。主人公がどんなに運命の恋だと強調しても、全然響きません。じゃあ、なんの落ち度もなく一方的に浮気をされ傷ついているだけの相手の奥さんに同情するかというと、そういう気持ちもありません。ただただ、「人間ってこえー」と思いながら、誰に肩入れすることもなくページをめくるのみです。

すごいなあと思うのが、作者がたぶんそれを意図しているということ。だって、いくえみ綾ですよ? 「POPS」の薬子の切なさに泣かされて以来、「潔く柔く」では何人もの登場人物すべてに自分を重ね合わせ、「G線上のあなたと私」では主人公に共感し過ぎてクッションに顔をうずめてジタバタさせられ、その上、私にとっての切ない漫画ナンバー1と言ってもいい「トーチソング・エコロジー」の作者であるいくえみ綾ですよ? 「せつなーい!超わかるー!」と言わせる漫画を描くことくらいわけがないはずなんです。でも、「あなたのことはそれほど」はそうではない。私が登場人物に感情移入できないのは、あらかじめそれを拒まれているからなのです。

これまで、感情移入というのは、物語にとってのキモだと思っていました。共感を重要視する女性向けの漫画では特に。 なのに、この「あなたのことはそれほど」はそれを拒否している。なのに、すごくすごく面白い。その理由を知りたくて読み進めても、読めば読むほど、理由はわからず面白さだけが募っていきます。こんな漫画、そうそうありません。

 

ドラマ化への不安とミゾミゾ

そんな、今、最も気になる漫画、「あなたのことはそれほど」ですが、4月には漫画を原作としたドラマが始まります。主演は波瑠。キャストにはいろいろ言いたいことがありますが、漫画や小説の実写化に、ファンの不満はつきもの。ネットのあちこちで話題になってることでもありますので、ここでは触れずにおきましょう。

でも、波瑠は好きな女優さんではあるものの、三都役にはちょっとちがうと思うんですよねぇ。清潔感がありすぎる。相武紗季あたりだったら、隠しきれない育ちのよろしくなさとか、うまく演じてくれそうなのになあ。波留は「あさが来た」のイメージが強すぎて。

と、触れないと言っておきながら、しっかり不満を言ってしまいましたが、ドラマの放送は火曜22時。「逃げ恥」「カルテット」と立て続けに私の心を震わせた放送枠です。「カルテット」では、有朱役の吉岡里帆が、「あさが来た」の宣ちゃんとはまるで異なる役を、恐ろしいくらいに演じ切っていました。春からのドラマでも、波瑠が今までのイメージを消し去るくらいの演技で、また私に新たなミゾミゾを味あわせてくれるのを期待したいと思います。