カリノ界隈

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娘が物心つく前に隠しておきたい本5選

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2年前に生んだ娘が当たり前のように2歳になった。泣くか眠るか乳を飲むかしかなかったあの赤ん坊が、 歩き、(ほぼ宇宙語だけど)話し、歌い、踊るようになるなんて、子供の成長というのは本当に恐ろしい。

ついこの間まで「もしかしたら美味しいのかも」と錯覚してしまうくらいの勢いで舐め回していた絵本も、いっちょ前にソファに座って、一人勝手に読んでいたりする。

 

「あおむし、えーんえん」

「みず、じゃあじゃあじゃあ」

なんて言ってるのをみると、内容も多少は理解してるようである。

 

そんな様子を眺めると、しみじみと「大きくなったなあ」と感じ入るとともに、アレをアレしなければいけない日も意外と近いと思わされる。

アレをアレするとは、本棚から幼い娘に見せたくない本を撤去すること。

 

読書家とはとても言えないけれど、私は本が好きだ。幼い頃からずっと好きだった。とりわけ小説と漫画が大好き。これまでいくつの物語を読んできたのか、数える気にもならない。

だけど、いくつかの引越しや断捨離を経て、今も手元に残っているのは、そのうちのわずか。だからこそ、私にとってのとっておきの本たちばかりだ。手放すことは考えられない。

私にとってはかけがえのない本だけれど、中にはさまざまな理由から幼い娘には見せたくないものもある。読書は、ほとんどの場合素晴らしいものだけれど、時には毒にもなる。用法・用量・タイミングを間違えると、取り返しがつかない。

 

娘の人生をあまりコントロールしたくないなと思うものの、毒になる危険性の高いものを手に届くところに置いておくわけにもいかない。今回は、私の本棚からいずれは動かさねばならない本をご紹介しようと思う。

 

はじめての妊娠・出産安心マタニティブック―お腹の赤ちゃんの成長が毎日わかる!

はじめての妊娠・出産安心マタニティブック―お腹の赤ちゃんの成長が毎日わかる!

 

それっぽいことを言っておきながら、最初の1冊は 娘のためではなく、私自身のために隠しておきたい本だ。この本には妊娠時の妊婦と胎児の様子が1日1日詳しく書かれている。たとえば「40日目」のページには、「赤ちゃんは11~14mmに成長しました。これはピーナッツの殻にすっぽり入ってしまう程の大きさです。」とある。「220日目」では「赤ちゃんの手の爪が最終的な位置まで伸びてきます」と、実に細かい説明がされている。妊娠期間中、目に見えない胎児が確実に成長していることが実感できるとても素敵な本。

なのに、なぜ娘に見せたくないかというと、ページごとに設けられている「diary」の欄が原因だ。ここには、ママになる人が日々のためらいや不安や期待や希望を書き込むことになってるんだけど、私の本は43日目で書き込み終了。ハイ、43日坊主です。これを娘が見てしまったら、「はじめたことはちゃんとやり抜きなさい!」なんて私のお小言は説得力ゼロになる。何としても隠しておかねばならない。

 

先生の白い嘘(1) (モーニングコミックス)

先生の白い嘘(1) (モーニングコミックス)

 

数年前から漫画はレンタルか電子書籍で読むことがほとんどになったけど、いくつかは紙で揃えたくなるものがある。今買い続けてるのは「大奥」「きのう何食べた」「3月のライオン」「クズの本懐」「あなたのことはそれほど」くらいかな。それからこの「先生の白い嘘」。「3月のライオン」以外はどれも幼い子の情操教育に向いた漫画ではないけれど、どれか1つを隠せと言われたらこれだろう。

主人公は友人の恋人にレイプされた教師。男女間の性の不平等が、じっとりと息苦しいくらいに描かれた作品だ。多感な時期にこんなものを読んだら一体どうなるんだろう。こわいこわい。

ここに描かれてる性のあり方は、1つの真実ではあるんだろうけど、「信頼」より先に「絶望」に触れたりしたら大変なことになる。男性女性それぞれへの信頼をしっかり獲得してから読んでほしい。 

 

愛人 1 (ジェッツコミックス)

愛人 1 (ジェッツコミックス)

 

私がこれまで出会った物語の中で、最も純粋な愛情を描いたものだと思う。初めて読んだのは、15年ほど前だろうか。柏の二番街にあった雑居ビル2階の漫画喫茶で、号泣した思い出。我慢できなくて漏れた嗚咽を聞きつけて、受付のお兄さんが様子をうかがいに来た。「すみません。ちょっと、感動しちゃって」という私に、本の表紙に視線を走らせて「いいすよね、それ」とうなずいてくれた優しい人。あれでロマンスのひとつも生まれなかったのは、私の人生の七不思議のうちの一つだと思う。

感動作にも関わらず、幼い娘に触れさせたくないのは、性描写が青年漫画だから。少女漫画みたいに、「握り合う手、乱れるシーツ、そして朝チュン」とはならない。(いまどき少女漫画でもそんな描写はないと思うけど。)でも、あのリアルに肉の柔らかさや熱さを感じさせる描写は、この物語には絶対必要なものなんだよねえ。
私からすすめることはないだろうけど、大人になった娘が、何かのかたちでこの漫画に出会って、何かを感じてくれたら嬉しいなと思う。

 

黒髪のヘルガ (F×COMICS)

黒髪のヘルガ (F×COMICS)

 

大好きな漫画家、朔ユキ蔵さんの浪漫寓話。少女性がテーマの素晴らしい作品。なんだけど、その素晴らしさをなんて説明したらいいのかわからない。かと言って「いいから読め!読んだらわかる」っていう作品でもない。そして、わかる人と「これわかるよねー。いいよねー」と分かち合いたい類のものでもない。ただひっそりと心の奥で温めておきたい。

これを読んだ娘に「わかる」と言われるのも「わからない」と言われるのもこわい。というわけで、選抜入り。 

 

八本脚の蝶

八本脚の蝶

 

 2003年4月に自らの意志でこの世を去った出版編集者、二階堂奥歯さんのウェブ日記「八本脚の蝶」を書籍化した本。私がこのウェブ日記の存在を知ったのは、彼女の死の数日後だった。お出かけ間際のネットサーフィンでサイトの存在を知り、そのままデートの約束をキャンセルして、読みふけった。ブローするために濡らした髪が、首にはりついて冷たかったのを思い出す。

自分自身には著者が見たものが見たいと思ったけど、娘には見せたくないし、存在自体知らないでいてほしいと身勝手に願ってしまう。でも、この類の本でしか救われないものもあるから、そんな風にはなってほしくないけど、もし娘がそうなった時は、そっと本棚に戻しておこうと思う。 

 

と、こんな具合に5冊の本を選んでみた。今度の連休の時にでも、本棚の整理もしながら、他の本も含めて隠し場所を検討しよう。だけど、あんまり念入りに隠してしまってもいけないな。私自身が見つけられなくなってしまっては大変だし、親の本棚から「大人のひみつ」みたいな本を見つけ出して、こっそり読む楽しさも、残しておいてあげなきゃ。